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理学療法士1年目だけど…「もうやめたい」と思う方は多いです

理学療法士の私が回復期リハビリ病院の常勤から訪問リハビリの非常勤へ転職した経緯と学んだことまとめ

 新卒で入職された理学療法士のうち、1年以内に退職された方は、私の体感では15~20%です。この数値は、私が過去に働いていたホワイトな勤務先で見た新卒の入職者と同年度の退職者の概算です。

 実際に構成労働所が掲げる離職率は、医療部門では10.2%、介護部門では18.8%(2016年8月5日 第2回理学療法士・作業療法士需給分科会 議事録より)のようですが、実際のところその通りだと思います。

 今でも新卒の方で、「この仕事は自分に合っていないから、やめようかと思います。」というお話はよく聞きます。私個人の意見は、1年目の状態で起こる事を理解した上で、それでも退職して構わない場合には問題ないと思います。

 しかし、問題は1年目の状態で退職した後に「何が起こるのか?」が、わからない状態で勢いで退職してしまう事です。

 ということで今回は、理学療法士を今すぐ辞めたいと感じるあなたへ、今の状態で働き続ける事に悩まないために、客観的な情報と具体的にできる行動の選択肢をお伝えしていきます。具体的には以下の通りです。

◯1年目程理学療法士をやめたくなる理由

●今の環境で働き続けるべき時っどんな時?

◯今この瞬間退職したらどんな事がおこる?

●転職を考えるべきなのはどんな時?妥当なタイミングとは

なぜ、1年目ほど理学療法士を辞めたくなるのか

「ものさし」がない状態で多方面からの意見に押し潰される

理学療法士の色は様々

 まず、理学療法士として入職すると、患者さんの疾患や状態に応じて基本的なリハビリが提供できるようになる必要があります。そのため、初めは基礎的な理学療法を指導者から教わり、実行する事になります。

 ところが、理学療法の業界には様々な治療法や流派の様なものが存在し、好みの考え方やリハビリがあります。

 あなたの直属の上司が、バランス良く指導してくれるタイプなら良いのですが、中には特殊な治療法に力を入れていたり、考え方がかなり偏ってしまっている方がいるのも現実です(1〜2割)。

 そのため、上司の話に一生懸命耳を傾け、実行するにも関わらず、他の上司からは注意を受ける事はよく起こります。

 一番困るのは、自分の上司には悟られない形で新人にだけ自分の考えを強要するタイプの理学療法士です。

 そのような時に、いろんな意見を聞いた上で、自分で治療方針やプログラムを選択できるタイプでないと、新人さんは混乱し精神的に追い詰められてしてしまうのです。

限りなくマルチタスクである

 患者さんに理学療法を提供する際に行うルーティン作業は以下の通り

(1)患者さんを迎えにいく

(2)体調確認をする(バイタルチェック、表情やその日の体調など)

(3)リハビリプログラムの実行(体調に応じて都度修正)

(4)患者さんを病室へ送りに行く

(5)カルテの記載および、医師・看護師などの他職種への情報共有(状態変化時など、必要に応じて)

 (1)~(4)を40〜60分で済ませ、次の患者さんとの間(医療機関の場合5分程度)に(5)を実行します。所定の時間に終わらなかった場合、次の患者さんに遅れる事になるので、ルーティンワークが身につかない内はかなり慌てる事になります。

 その上、1年目は特に、リハビリ中に先輩療法士からの目線を浴びることも多いため、丸一日気が抜けないということもあります。

自分が思い描いていた仕事像と現実のギャップ

 例えば、「痛みを素早く取り除ける、カッコいい理学療法士」をイメージした状態で医療機関に入職し、提供するリハビリは毎日似た様な内容の状態が生じるとします。

 それが、必要なことであると理解しつつも、それは自分の憧れの像とかけ離れている状態です。

 働く職場について、よく理解しないままに就職してしまうと、このようなことも起こり得ます。自分のいる環境に耐えきれなくなってしまう状況です。

 また、そのような環境下にあるにもかかわらず、基本的な業務の枠を外れて自分の真を貫くことによって、入退院の手続きや事務作業などが全くできずいると、ますます仕事がやり辛く感じると思います。

今の環境で働き続けるべき時ってどんな時?

基本的な業務の全般が理解できていない時

◯目の前の患者さんの状態の把握(評価表や計画書などの作成含む)

●目標設定

◯リハビリプログラムの立案、実行、修正

●他スタッフや他職種との連携(患者さんの緊急時対応や、状態の報告・連絡・相談を含む)

◯退院にまつわるイベント(退院後の移動手段の確立、家屋評価、サマリーの作成)の遂行

 上記の業務は、理学療法士として働こうとすると、どこでも多かれ少なかれ必要な事です。

 これからも理学療法士として働く上では、始めに就職した場所で上記サイクルを何度か繰り返し経験し、身につける事が理想です。

 この流れについて、自分の中で一つ一つの雛形(ひながた)を持ち、実行する事ができれば、ある程度柔軟に動けます。つまり、【新人→ひとり立ち】へステップアップする前に辞めてしまうのはもったいないという事です。

辞めたいと感じた事象が一時的である場合 

 「理学療法士をやめたい」そのような想いに至った理由が感情的である場合は、勢いで退職を決意してしまうのは気をつけましょう。

 理由は、一時的な感情は長くは続かず、1週間や1ヶ月すぎると、その意思が揺らぐ可能性が高いためです。

 誰か職員に理不尽な事を言われる事もあると思います。新人の間は八つ当たりにたことをされる事もあると思いますが、基本的には、どんな職員も自分にとっての正義に則って仕事をしている場合が多く、その人その人の正義が他者や他の状況下では悪になることもまたよくあることなのです。

 次に説明する事項もよく読んで、冷静に考えてみて下さい。

今この瞬間退職したらどんな事がおこる?

 たまに、「理学療法士をやめます。大丈夫です、バイトをすれば同じくらい稼げますから」なんて仰る方がいます。

 しかし、学生時代にバイトした状況を今に当てはめるのは危険です。理由は、学生を終えると、あなたは毎月納税をしなければならないからです。

収入は途絶えるが、税金の支払いは生じる

 まずは給与明細を見てみてください。基本給や残業手当のほか、職務手当や住宅手当など、色々あります。

 その中で注意すべきところは、給与から天引きされている税金についてです。今あなたが扶養に入っていない限りは、以下の税金を支払っています。

年金(毎月)

 年金です。日本ではみんな入らなくてはならないものです。会社で年金に入っている場合には、実は半分は会社が支払ってくれています。(会社で入っている場合には年収によって額が変わります)

 会社を辞めると、自分で支払うことになりますが、国民年金だけでも毎月16000円くらいかかります。

健康保険料(毎月)

 あなたが医療機関に受診して3割負担で診察したり薬をもらえるのは、この保険に入っているからです。

 収入によりますが、毎月2万円程度支払っています。ちなみに、健康保険料も会社側が半額だしてくれているので、会社をやめるとこの負担額は増になります。

住民税(1年目の方は翌年から発生)

 働き始めの場合には、給与明細には載ってないと思います。理由は、住民税は前年度の課税所得によってきめられているためです。           

 この額も収入に応じて決まりますが、例えば前年度の年収が400万だとすると、翌年には年18万かかります。

  ちなみに、例えばあなたが今結婚して、旦那様か奥様の扶養に入るとすると、年金と健康保険料は課税されなかったりしますが、住民税については前年度の取得によってきまるため、支払いの必要があります。

「即戦力」としての採用は困難

 少しキツイ事を言ってしまう様で申し訳ありませんが、リハビリに関連する基本的な業務を覚えていない状態では即戦力として採用されることは難しくなります。

 理由は、入職後に企業側が基本的なリハビリ業務をあなたに指導しなくてはならないからです。新人として病院に入職した場合、多くの場合オリエンテーションや勉強の場を設けてもらえますが、かなり時間がかかるものです。

 そのため、新年度じゃないタイミングで新入職者を受け入れた病院では、受け入れ側は追加で新人さんへの教育の時間や労力を支払わなくてはならないからです。その際、教育する側の人間はリハビリの時間が減るわけですから、当然コストがかかるのです。

 しかし、転職ができないわけではありません。1年目の状態で退職したいと思っている方は他にもいますし、現に退職する方も多くいます。

 つまり、どこかの病院では同じく辞めた新人さんの部分に空きが出ている状態なので、「新卒枠」で入職できないという事はありません。

転職を考えるべきなのはどんな時?妥当なタイミングとは

明らかにパワハラを受けている

 悪質なパワハラを受けている場合には、記録なり、録音なり証拠を残しておきましょう。

 基本的に、あなたが介在しない第3者同士の会話でない限りは盗聴にはなりません。秘密録音と言います。

 そして就職し、6ヶ月勤務していれば、パワハラが原因での退職は、それが認められれば会社都合での退職となり失業給付金ができます。

 しかし、確固たる証拠がなくてはパワハラを否認される事もあるので注意が必要です。(否認された場合には、裁判で決着をつけなければ給付金の申請が難しいのです。)

精神的に限界を感じる時

 上記のような状況下以外でも、業務上必要のないような事であなたが精神的に追い詰められてしまっている場合(いじめなど)には、逃げるのも一つの勇気です。

 ストレスで毎日吐きながら仕事に向かっていた知人もいますが、人生は長いですから、たまたま就職した職場が全てだと思わず、自分にあった環境に身を置く事を検討するべきです。働きながら転職活動して、採用されればと辞めるでも良いんです。

(就業規則は確認しておきましょう。退職は2ヶ月以上前に申し出る様になどと記載されていると思います。)

通算12ヶ月以上勤務した後

 通算12ヶ月以上勤務していると(雇用保険料を支払っている場合)、3ヶ月程度の待機期間を経て失業給付金が出るようになります。

 やや条件はありますが(就業の意思があるなど)半年未満で辞めるよりは気持ちにも余裕が出てくるでしょう。

リハビリ業務を一通り覚えられた後

 リハビリ業務の流れを一通り覚える事ができれば、転職のハードルは結構下がります。採用側からすれば即戦力になるからです。

 また、業務を一通り覚えると、自分の興味のある分野も見えてきます。ニッチで専門的な分野は、あなたの市場価値をあげてくれます。

 そのような場合は、臆せずむしろ前向きに、どんどん新たな分野にチャレンジしていきましょう!