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なぜ理学療法士の給与は低いのに残業が多いのか

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 晴れて理学療法士試験に合格し、いざ就職して少し経った頃にふと、「あれ、給与は大して高くないのに、なんでこんなに残業が多いんだ?」と疑問に思われた方も多いと思います。

 本日は、なぜ理学療法士の給与は高くないのに残業が多いのかを解説し、後半ではそれに対する対応策についてお伝えしていきます。

給与が低いのに残業が多い理由

わかりやすくお伝えするために、給与が低い理由と残業が多い理由を分けて解説していきます。

給与が低い理由

 理学療法士の平均年収、418.9万円(平均年齢33.9歳

 給与取得者全体の平均年収は436.4万円(平均年齢46.7歳)のため、他の職業と比較すると一見低いようにも見えますが、平均年齢が10歳以上若いため、その影響も大きいと思われます。

参考:職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

 では、今後、理学療法士の平均年収が大きく上昇を期待できるのかと聞かれると、その希望は薄いのではないかと考えます。理由は以下の通りです。

  • 理学療法士として稼げる報酬は国で決められている
  • 私たちの収益の元となる診療報酬はほとんど増えていない(むしろ部門によっては減ってきている)
  • 理学療法士の供給は既に需要を上回っており、2040年には、供給が需要の1.5倍になるという推計が厚生労働省の方から既に出ている(2019年の時点で公開されています)
  • 給与が大して変わらなくても、働き手はある
  • 1年目と20年目の理学療法士が同じ患者さんに1時間リハビリを提供したとしても、発生する報酬は変わらない

 自分で稼ぐことができる収益に大きな変わりがない状態で、給与(年収)が上がることはあまり期待できません。

 雇用側も上げたくても上げようがないのです。例えば経験年数によって給与を上げていくとすると、経験年数が高い理学療法士を雇用すると、単純に病院側の利益が減ってしまうということになります。

 すると、雇用側はできるだけ経費を抑えるために、若い人材を採用せざるを得なくなります。

残業が多い理由

残業が多くなってしまう一番の理由は、私たちが理学療法士として稼ぐことのできる報酬には、時間の縛りがあるところです。理学療法士として何をしたかというよりも、患者さん(利用者さん)に対してどれくらいの時間(何単位)リハビリを提供したのかが報酬に直結しています。

ところが、私たち理学療法士の業務はリハビリを提供するだけではなく、他にもたくさんの諸業務があります。

  • 書類業務
  • 患者のご家族からの相談の受け答え
  • 後輩・実習生への指導
  • 他職種との連携・話し合い
  • 研修や勉強会の資料の作成

(書類業務については多少の報酬は発生しますが、リハビリ業務と比較するとその点数はごくわずか。)

 ここで、病院や事業所の運営側が考えることを想像してみます。当然、病院や事業所の存続のために、収益を上げていく必要があります。

 そうなると、リハスタッフが勤務する時間はできるだけ患者や利用者にリハビリを提供できるようにスケジュールが組まれていくのは自然なことです。

 それに対して、報酬がほとんど発生しない諸業務に使える時間は必要最低限に絞られることが多いでしょう。

 結果、理学療法士の残業時間は経験年数や諸業務が増えることによって自然と長くなっていく傾向にあります。

 そして、仕事に真面目に丁寧に取り組みすぎる人ほど、諸業務に使う時間が長くなり、残業する時間も増えます。

 以上が、理学療法士の給与が低いのに残業が多い理由です。

給与を増やし、残業を減らすための対応策

続いては、上記の内容を踏まえた対策についてお伝えしていきます。

  • 転職をする
  • 今の場所でできることする
  • 退職して個人事業を始める

転職をする

これは、上記3つの中では1番即効性のある手段と思われます。今よりも給与が高くて残業が少ない場所を探します。

 探し方は、自分の力だけでは中々厳しいため、転職エージェントなどのコンサルタントを通した転職活動が望ましいと思います。自分一人で行うと、給与交渉や働きづらさについて確認し辛くなるなり、結果的に思う様な働き方ができなくなる恐れがあるためです。

転職エージェントは、下記のような求人サービスです。

残業が少ない職場かどうか見極めるために、以下の点は確認しましょう。

  • リハビリスタッフがある程度充実しているかどうか→充実していれば、持ち患者の人数が分散されることにより、業務負担が減る
  • スケジュールの中に、書類業務や話し合いなどの時間を必要であれば設けさせてくれる
  • スタッフの月の平均的な残業時間が少ない

 またリハビリ以外の諸業務が簡易化されているところもおすすめです。

 諸業務の簡易化については、リハビリ科のトップや管理職の人間がスタッフの業務負担の軽減にどれくらい力を入れているかによってだいぶ変わってきます。

 例えば、古風でいつまでも昔のやり方で通すような職場よりも、機械やシステムは新しいものを取り入れ、常に効率良く試行錯誤するような場所の方が良いでしょう。

 ちなみに、病院と比べると入退院などの出入りが少ない訪問リハビリ、老人保険施設、有料ホームの方が諸業務は少ない傾向にあります。

転職活動をする際の注意点は以下の通りです。

  • 一見月収が高そうに見えても、ボーナスや諸手当が低いと年収自体はさほど変わらないケースがある
  • 将来的に転職に困らない様に、転職先で経験を増やせるかどうかも考える

今の場所でできることをする

続いては、転職をせずに今いる場所で給与をあげる方法についてお伝えします。

給与を上げる方法は、ズバリ諸手当をあげるという事です。

  • 管理職(役職)につく
  • 理学療法士としての価値を高める資格をつける(セラピストマネージャー、認定療法士、福祉用具プランナーetc.)

 管理職は、ただ一生懸命やみくもに働くだけではなれません。

 勤務先の運営の事業計画、リハビリ科のトップが掲げた事業計画をしっかり読み込み、自分がどのように働きかければ役に立てるのかを考え、行動し、客観的で明確な成果を出していく努力と根気が必要です。

残業時間を減らす方法は以下の通りです。

  • 残業時間を減らす仕組みを作る
  • 話し合いの回数は最低限にする、会社内のメール連絡などに留める

 残業時間を減らす仕組みとは、例えば書類業務についてはWordやExcelを使って、打ち込みではなくクリックで済ませられるようなフォーマットを作ったり、報酬の発生しない必要性の乏しい業務をいっそのことなくしてしまうというものです。

 驚く事に、昔から続けているという理由で発生している様な業務も探せばみつかることもあります。なお、仕組みづくりは客観的な実績や成果物としてはとてもわかりやすいもであるため、管理職につきたい場合や転職活動時、共に有用なのでおすすめです。

 また、話し合いや申し送りなどの時間は必要性最低限にするというのは残業時間を減らす効果は大です。そのためには、話し合うまでもないような連絡内容はメールで済ませたり、どうしても話し合いが必要なときは「何を決めるために話し合うか」を事前に共有しておきましょう。話し合う時間が遅ければ遅くなるほど、判断力が低下し効率も悪くなるためです。

退職して個人事業を始める

 最後に、自分で仕事を始めてみるという選択についてお話します。私の体感になってしまいますが、1割程度の人間は、個人事業主として働いています。

 しかし、ご存じの通り、法律上は理学療法士として開業する事はできないため、事業名や事業内容については注意が必要です。

 自分で集客し、サービスを提供し、報酬を受け取ることになるため、やりがいは高く、稼げる額も自分で決めることができます。

 人によっては月収1000万も夢ではありませんが、リスクも伴います。

 そのため、家庭持ちの方や身動きが取りづらい方にいついては、小さく、副業程度から始めてみることをおすすめします。

 個人事業主になる方法や副業の始め方については、また別の記事で詳しく解説したいと思います。