理学療法士として働いていて、将来どのようになっているのか、疑問に思う方は多いと思います。
現在働いている方で、とにかく目の前の仕事をこなすのに必死で、将来のことを考える余裕もない方は要注意です。この記事をぜひ最後までご覧になっていただけたらと思います。
本日お伝えする内容は、理学療法士の将来性に関して現段階で想定されることを解説し、うまく働き続けるためにできることを併せてお伝えします。
将来、理学療法士はどんな働き方になっているのだろうか
理学療法士は勤める病院や事業所、診療所によって、リハビリ内容は大きく異なります。ここでは、もう少し広い枠組みで、どのように働き方が別れていくのか説明していきます。
①一般従事者:(保険内診療)病院、整形外科、事業所、施設など
②一般従事者:(保険外診療)脳卒中専門リハ、インソール制作専門など
③個人事業主:(保険外診療)個人契約、サロン、整体院など、自身で稼ぐフリーランス
④会社経営者:訪問リハビリ事業所、デイサービス、自費サービス事業所などの社長
①一般従事者(保険内診療):会社員
多くの方が該当すると思われるのが、保険内診療でリハビリサービスを提供する理学療法士として働くやり方です。
求人を探すと、現段階で募集はたくさん出てきます。
会社員の中では、役職がついている人と、そうでない方で働き方と給与は変わってきます。具体的には下記のように分かれます。
管理職:課長、室長、主任
一般職:肩書きがない方
給与については、当然ですが役職の有無によって異なってきます。年収に例えると主任クラスは基本となる年収から30万、室長・課長クラスであれば年収100万程度の向上が見込めるでしょう。(ちなみに、役職がつくと、ボーナスや毎年の昇給額も上がります)
②一般従事者(保険外診療):会社員
専門的なリハビリや技術などのサービスを保険外で提供します。
給与は、1日に何人の患者にサービスを提供できるかにかかってきますが、基本的には特定の秀でたスキルが求めら得れるため、料金を高く設定している場所が多いです。
年収は①の保険内診療よりも少し高くなることが想定されますが、集客に難渋している職場の場合には、①と全く変わらないこともあるでしょう。
自費診療という部分では後述するお個人事業主と近しいことが想定されますが、双方は会社員か経営者か、つまり自分で稼ぐかどうかという大きな違いがあります。
③自費診療(保険外診療):個人事業主
専門的なリハビリや技術などのサービスを保険外で提供するところまでは、②と似ています。しかし、個人事業主として経営を行なっていくためには、サービス内容を確立するだけでなく、集客(営業)、会計など経営に関わること全てを自分が主導でしていく他ありません。
収入はあなた次第で青天井と言えば聞こえはいいですが、個人事業主は会社員と比べ、とにかく守られていない状態です。雇用保険にも入れないので、もし倒産したとしても失業手当はもらえません。
このような働き方をする方は、色々な手段を使って自ら営業をし、契約まで結びつけます。SNSやホームページ、広告サービスを利用して集客し、顧客を増やすこともできます。
理学療法士の会社員として働いていると、自分で稼ぐという意識はなかなか育ちません。(現状、保険内サービスとしてのリハビリは時間ごとに報酬が支払われる状態です。)自分で考えたサービスを提供し、報酬を受け取る。この、「稼ぐ」経験はかけがえのないもので、その価値は=稼げた報酬ではありません。
個人事業主としてサロンや整体院を開き、経営をされている方の割合は少ないですが、体感的には理学療法士の人口の5%前後といったところでしょうか。
なお、理学療法士協会は、保険外診療は推奨していません。理由は本来理学療法士は医師の指示のもと、リハビリを提供するはずの職種であるためです。そのため、理学療法士としての開業は禁止です。
④会社経営者:社長
個人事業主が個人で稼いでいくのに対し、会社経営者の場合には他者の労働力を使ってサービスを提供していくため、軌道にさえ乗れば、他の働き方よりもあげられる収益の桁が異なるでしょう。
しかし、会社の5年生存率は40%といわれているため、夢はありますが一番リスクとハードルが高い働き方と言えます。
理学療法士の会社経営者では、自分でデイサービスを開設したり、訪問看護ステーションを立ち上げるというケースが多いです。特に、理学療法士が社長となるケースの訪問看護ステーションの事業所は一時とても数が増えました。
しかし、比較的大きな病院なども訪問リハビリのサービスを提供しはじめており、小規模の訪問看護ステーションは今では倒産してきているところもある点に注意が必要です。
デイサービスでは、初めは1つのデイサービスから経営し、軌道に乗った後にグループ化し、スケールを大きくしていく方もいます。
将来起こることがある程度明確であること
大事なこと(1):何もしなければ、給与はおそらく下がっていく
理学療法士の供給は既に需要を上回っており、2040年には、供給が需要の1.5倍になるという推計が厚生労働省の方から既に出ています。(2019年の時点で公開されています)
供給が需要を上回れば、病院や企業側は理学療法士の採用数が減っていくことが自然です。つまり、転職や就活に苦しむ可能性が出てきます。
そして、是が非でも就職したい理学療法士があふれるため、病院や企業側が採用コストや給与を多少安くしても、人員を確保できる可能性があります。
そのため、技術や知識、組織をうまくまとめていく力など、強みがない場合には給与が下がっていくことが懸念されます。
大事なこと(2):理学療法士の質に応じて、給与は上がる可能性がある
現在、保険診療上、理学療法士がリハビリをすることで発生する診療報酬は、技術や知識を全く反映しない、患者側もどの理学療法士を選んで良いかわかりませんし、理学療法士側にとってもいくら勉強しても収益が変わらないのでかなり不合理な状況です。
そんな中、理学療法士協会の方では、理学療法士の質を診療報酬に反映させられるように、色々工夫をしようと動きが出ています。それは、しかる勉強や研鑽を積み、資格や称号を取得すれば、診療報酬に反映されていくものだと推測できます。
大事なこと(3):医療分野よりも、介護分野の診療報酬が引き上げられつつある
医療や介護の診療報酬改定を見てみると、今は介護分野でのリハビリの診療報酬が挙げられています。対して、医療分野のリハビリの診療報酬は下げられつつあります。
これからは、高齢者は病院などで療養するのではなく、住み慣れた家でサービスを受けながら生活し続けていくことが主流となっていくことが考えられます。現に、療養病床は赤字経営となりやすく、病床数が減っています。
それは、国の医療費を削減することにもつながるのです。
これが何を意味するかというと、医療保険でサービスを提供する病院などで勤務する理学療法士は、今後給与があげにくくなる可能性があるということです。
逆をいえば、介護分野である訪問リハビリ、通所などの在宅分野に力を入れている事業所などで働いている場合には、診療報酬の向上から給与に期待ができるかもしれません。
大事なこと(3):働く環境によっては、介護要素が強くなる可能性がある(専門性の逆行)
さて、理学療法士の供給が増えていく中で、介護士や看護師などの人手不足が懸念されています。現在既に、一部の回復期病院などでは、ナイトリハ、モーニングリハが導入され、リハビリの時間に介護要素が強い見守りや介助を行うことが業務の一部となっています。おむつ替えも業務の一環となっている病院もあります。
ナイトリハ、モーニングリハとは、基本となる9:00〜17:30の就業時間から少しずらし、7:00からや、15:00からなど、勤務開始時間が変わる日が定期的に加わるようなイメージです。
モーニングリハやナイトリハが導入されている病院のリハビリ職の方は、シフト制を組んでこのような働き方もしています。
このような業務は、とても大切なことは確かです。患者の日中の元気な姿しか見たことのない理学療法士にとって、夜間に性格や動きがガラッと変わり介護や介助がとても大変になってしまう患者さんに対応したり、動いているところを評価、介助する体験はとても貴重です。
しかし、現実的にはそのような環境では、特に子育て世代の方は働き続けることが難しくなることもあるでしょう。また、専門的な技術を磨くといったこととはややずれていることから、その働き方が、将来給与の給与に反映されるものなのかどうかは疑問です。
理学療法士として働き続けるために、今からできること
理学療法士として働き続けるにあたって、まずはあなたがどのような働き方をしたいか考えてください。
以下は一例です。
- 管理職について給与を上げたい
- 一般従事者のまま、同じ場所で働き続けたい
- 専門性を突き詰めて、自費診療やフリーランスをしてみたい
- 正直理学療法士をやめたい
管理職(役職)について給与を上げたい
まずは、理学療法士としての技術や知識の量と、管理職につくための能力は異なるということを知ってください。
理学療法士としての勤続年数や経験年数が高くなれば管理職になれるわけはなく、規模が大きくなればなるほど、より感情的にならずに客観的に論理的に物事を瞬時に判断できるタイプの方に役職がついていくのが自然です。
また、そのような方は、自分の上司だけでなく、その組織のトップが何を考えていて、業界や組織全体がどこに進んでいこうとしているのかを常に考えています。
対して、感情的になりやすかったり、こだわりが強い方は管理職としては扱いにくいと思われてしまうため気をつけてください。
そのような意味では、何か特定の技術や知識に一生懸命になりすぎるタイプの方は、管理職は難しいと思います。特定の技術や知識に夢中になってしまうタイプの方は後述する自費診療に勤める方が仕事として楽しいでしょう。
もし、将来的に管理職につきたいと思っているのであれば、下記の点を意識するとよいでしょう。
- 知識や技術は、狭く深くよりも浅く広く…いろんな分野を経験しよう(急性期〜在宅まで経験してみるなど)
- 他者と明確な差別化を図ろう…呼吸認定療法士、認定理学療法士などの資格を持つ
- 組織の管理能力を育てよう…自責思考で物事を考える、自分が管理者だったらどう問題を解決するだろうとイメージする習慣をつける
一般従事者のまま、同じ場所で働き続けたい
一番スタッフが多いと思われる環境です。そのため、そのスタッフから抜きん出る何かを身につけられると重宝されるでしょう。
給与を上げていくために、理学療法士としてのあなたの質を上げていきましょう。
- 情報を早めにキャッチする姿勢を保つ…理学療法士協会のホームページを定期的にみる。自分に有利となりそうな情報があれば、すぐ行動する(資格など)
- 勤務先や転職時のアピールポイントを作る…明確であるほど良い。資格、仕組み作りなどの経験
- 他職種と良好な関係を作ろう…退職のきっかけとなる理由の多くに、人間関係があります。療法士間だけでなく、看護師や医師、コメディカルスタッフを思いやる習慣をつけましょう。
自費診療やフリーランスをしてみたい
一般従事者の方で、「専門性を高めて、自費診療やフリーランスとして働いてみたい」という方は多いでしょう。
自費診療の場合は、調べれば求人も出ていると思うので、気になる専門の求人を探すところから始めましょう。
フリーランスとして働きたい場合には、突如として収入が0になってしまうリスクを考慮しましょう。今の職場を辞めて、非常勤としてどこかで働きながらフリーランスとしての事業をスタートするのも良いでしょう。
- 知識や技術…浅く広くよりも、狭く深くの方がサービスが明確になりやすい
- フリーランスや個人事業主になる場合…長期間収益0(もしくはマイナス)になることを考慮し、小さく始める。(例:非常勤に転身したり、訪問リハビリのパートをしながら、事業を始めるなど)
- 自費診療やフリーランスとして働く理学療法士を追ってみる…SNSやホームページなどを参照
- 自身のSNSを作って発信してみる…フォロワーの量が多ければ、後に仕事につながりやすい
正直理学療法士をやめたい…
理学療法士をやめたいと感じている場合、何かのきっかけで勢いで辞めてしまう方がいらっしゃいます。
まずはいきおいで辞めるのは避けましょう。理由は、理学療法士の給与は、高くはありませんが、何も資格がないより給与は良いからです。
そして、いざ理学療法士をやめようとしても、生活費はなかなか下げられません。同じくらいの生活を維持しようとすると、意外と理学療法士の給与は悪くなかったことに気づくでしょう。
そのため、おすすめは小さくやめることです。小さくやめて、できた時間で興味のあることや新しいことをはじめ、次の仕事につなげていくイメージです。
- 勢いでやめない…働くことをやめても、生活費や税金はかかります。
- 小さくやめて、小さく始める…訪問リハビリのパートをしつつ、やりたいこと探し
- 理学療法士から少しずれた環境への転職…リハ関連企業や、介護サービス企業、教育機関、研究施設など、経験を活かせる場所
- やりたいことをやってみる…将来後悔しないために、若いうちに興味のあることを色々やってみよう
ということで、この記事はこちらで以上となります。理学療法士の将来性と、どう行動すれば良いのかを私の見解を交えお伝えさせていただきました。
この記事を読んでくださった方の中には、これから転職を検討しようとされている方もいらっしゃると思います。その場合には転職サイトよりも、転職エージェントを利用することをおすすめします。(この記事下にも貼り付けしておきます)
理由は、転職エージェントはあなたの希望からよりすぐりの求人を見せてくれるためです。企業側はよりすぐりのスタッフを早く雇用するために、転職エージェントにはかなり高額な料金を支払います。
しかし、その報酬は採用が決まってから支払われるため、転職エージェントのコンサルタントは転職先が決まるまでかなり丁寧に求人を紹介、支援してくださいます。
詳しくは下記の記事をご覧ください。それでは、ここまで長文を読んでくださり、ありがとうございます!